いすみラーニングセンター、12月の活動テーマは「小さなシネマ、はじめます」だった。
「いすみといえばロケ地」とすぐに思い浮かぶ方もいるほど、いすみ市はさまざまな作品やCMのロケ地になっている。しかし正直なところ、私は今回の活動前まで、そこまで強く意識したことはなかった。
午前中にお話を伺ったのは、いすみロケーションサポートの職員の方。会場は「コモジーハウス」という古民家のレンタルスペースで、店主の添さんの作品が並ぶ、とても素敵な空間だった。

「ロケ地」と聞くと、映画やドラマ、CMなどをまず思い浮かべるが、話を聞くとバラエティ番組のグルメ企画もロケ地に含まれるという。いすみロケーションサポートでは、いすみ市内で行われるメディア撮影に際し、各種手続きの支援や、撮影に伴う移動・ロケ弁の手配などを行っているそうだ。
主な活動は以下の二つ。
・フィルムコミッション(前述の撮影支援)
・ロケツーリズム(バラエティ番組などへの提供を通じて観光客の増加を図り、シビックプライドを育む取り組み)
お話の中で何度も出てきたキーワードは「官民一体」。官民一体とは、市役所などの公的機関と民間企業が一体となって動くことを指す。今回お話を伺った方は市議会議長も兼任されており、その点からも、いすみ市は行政と民間の連携が取れていることが特徴だと感じた。市役所が窓口となって撮影を受け入れることで信頼を担保し、実際のサポートは民間が請け負うことで柔軟な対応が可能になるという。
観光地以外の場所では、町の協力がなければロケ地として成立しにくく、また前述の信頼性の観点からも、市役所との連携は不可欠だそうだ。ただ現状では、この「官民一体」の体制によって市役所と強く結びついているがゆえに、民間であるいすみロケーションサポート側に十分な運営資金が回らないという課題もあるとのことだった。

今回のお話は、映画も町も好きな私にとって、「町にとって本当にベストな形とは何だろう?」と考えるきっかけになった。ロケーションサポートの方は、町を知ってもらうために「どんどん人を呼びたい」という視点で話されていたが、人を呼ぶことで町が変わってしまう側面もある。その町の良さを長く残すために、バランスの取れた方法はないのだろうかと考えさせられた。
昼食は、すみれ舎のお弁当。おかずはもちろん、個人的には神丹穂入りのごはんが甘みがあってとても美味しかった。さらに、コモジーハウス店主の添さんが用意してくださった京都の飴屋さんの飴や、ご自身で漬けられたというお漬物もいただいた。


午後はPott’s Garden Farmへ移動。普段は英語教室として使われている蔵の2階をお借りし、映画を鑑賞した。今回のプランナーであるちゆきさんが、毎月1作品をこちらの会場で「雑草シネマ」として上映する予定で、今回はその記念すべき第1回目だった。上映作品は「The Repair Cafe」。監督は日本人だが、オランダを舞台にしたドキュメンタリーだ。

リペアカフェとは、持ち込まれた物を修理するボランティア団体で、オランダを中心に各地で開催されている。この映画では、修理に持ち込まれた4つの物と、その持ち主、そして修理するボランティアそれぞれが、どんな思いでリペアカフェを訪れるのかに迫っている。

11月にオランダを訪れ、今年も再訪予定のある私にとって、とても興味深い作品だった。また、映画の中で語られていた「消費者は長く使えるものを選ぶべきだ」という言葉が印象に残った。長く使えるものを作らない企業も増える中で、どの企業の商品を選ぶのかという取捨選択は、今後さらに重要になると感じた。以前、何年も使えるタッパーを開発した会社が、「壊れないがゆえに」売り上げが伸びず倒産したという話を読んだことがある。消費者としては長く使えるものを望む一方で、良いものを作る企業が長く続く仕組みがあれば、より良い社会になるのではないかと思った。

また、いラセンメンバー以外にも上映会の参加者が何人か来ており、その中にPott’sさんのもとにホームステイしているというフランス人学生二人がいた。少し雑談をする中で、「円安だから今がベストタイミングだよね」と話すと、一般的なフランス人にとって日本は「お金のかかる観光地」という認識だという。良い和食店や懐石料理は高く、一等地のホテルや有名観光地では湯水のようにお金がかかるため、日本を旅行先として選ぶフランス人は減っているそうだ。
本人たちは、日枝神社を訪れたり、もともとお金のかからないことを目的にしていたため問題なかったと言っていたが、日本人が感じる「日本は安い観光地になっている」という印象は、必ずしも海外の人に当てはまるわけではないのだと感じた。ちなみに私自身も先日パリを観光したが、思っていたほどお金はかからなかった。文字情報や伝聞だけでなく、実際に自分で体験することの大切さを改めて実感した。
上映後は、Pott’sさん自家製のコーヒーやレモングラスティーをいただき、その後は夕礼。映画のテーマに合わせて持ち寄った、「直して使いたいもの」「直して使っているもの」をそれぞれ発表した。財布や皿、靴など、物に込められた思いを聞くことができ、とても素敵な時間だった。

今回も多くの人と出会い、話し、自分の中に生まれた疑問と向き合うことができた。映画が好きでよく鑑賞する私だが、普段はその土地の美しさや映し方に目が向き、その裏で動く人々や実際の町にまで考えが及ばないことが多いと気づかされた。また、物との向き合い方や資本主義社会の在り方など、さまざまなことに思いを巡らせる、充実した一日だった。